最凶の深夜特急

11/12 その③ 【アーグラー/ベナレス】


アーグラーの駅でベナレス行きの寝台車の切符が取れなくて困っていた。
寝台がないなら普通車で行けばよいのだが、
親切なインド人に「予約の要らない普通車は立つ場所もない」と教えられたのが気になっている。
一体どんな様子なのだろうか??列車は次々と入線してくるので、
ホームへ行って普通車はどんなものか自分の目で確かめてみようと思った。
ベナレスへ行くか、アーグラーに1泊するか、それから決めよう。


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薄暗いホームはやはりインド人で溢れていた。
街中同様にホームもとても汚くて、荷物を置く気にもなれない・・・
ホームから線路に向かって用をたしている人が何人もいた。



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人間だけでなく荷物もいっぱい。一体どこに乗せるというのだ。



まもなくうるさいアナウンスと共に列車が入ってきた。かなり長い車両だ。
この列車に乗るわけではないが、普通車を見物しなきゃ!




そして、普通車発見。

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「・・・・・・・」

うわぁ・・・酷い、まるで難民を輸送しているかのようだ・・・
乗客の乗り降りも、もはや乱闘状態に近い。中の人が降りてから乗ればいいだけの話なのに・・・
まさか目的の列車もこんなだろうか??ベナレスまで12時間。こんな状況に耐え続けられるだろうか??


どうするか考えよう。もしアーグラーに泊まるならこれから市街へ出て宿を探さなければならない。
明日の同じ夜行列車もキャンセル待ち状態で乗れるかはわからない。
旅行の日程も見直す可能性も出てくる。


できれば先に進みたい・・・
前向きに考えてみれば人間の数は東京の通勤ラッシュ並かもしれない。
違うのは周りが全員インド人なのと、長時間乗り続けなくてはいけないこと。
だんだん空いて来るかもしれないし・・・


よし、乗ろう!!
迷いに迷った結果、覚悟を決めて切符を買った。約600kmの距離が420円程だ。安く済んだと思えばいい!


夜9時過ぎ、ようやくベナレス行きの夜行列車が到着した。
普通車は・・・残念ながら難民輸送状態だった。
しかし覚悟は決めている。多少の強引さは通勤ラッシュで慣れている。
インド人達にまぎれて車両の中へ突き進む。もはや自分の意思で動けない。
荷物を網棚に乗せようか、と思ったら網棚にも人がいる。
無理矢理荷物を置いて、あとはもう身を任せるのみだ。


この混雑にインド人達はイライラしているように見えた。
この車両は運賃が安いためか、裕福な生活を送っているとは思えない客層だった。
あまり雰囲気は良くないな、なるべく愛想良く振舞うことにした。


途中駅に停車するたびに「なるべく多くの人が降りてくれ」と祈る。
しかしなかなか乗客の数は減っていかない。
3~4時間経過した頃だったろうか、目の前の座席が空いた。すかさずインド人がその場所を確保した。
するとそのインド人は詰めてくれて、わずかな隙間に「座れよ」と声をかけてくれた。
おおっ、助かった~、まだありえない混雑だが、座れるだけでだいぶ違う。


さらに数時間が経過、だんだん人が少なくなってきた。
いつの間にかウトウトしてしまった。はっと目を覚ますと周りのインド人が笑っていた。
「上で寝なよ」と言って網棚を指差している。
もう網棚でも構わない。寝られるのであれば!
喜んで網棚に上がり、貴重品を枕にして横になった。
疲れていたのだろう。網棚ベッドでも何の違和感もなく眠りにつくことができた。


気付いたら外は明るくなっていた。かなり熟睡できたようだ。
ここにきてようやく写真を撮れる状況になってきた。
特別席・網棚シートからの眺めはこんな感じ。

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予定到着時刻より4時間も遅れて、午後1時にベナレス到着!
はぁ~、長かった・・・。凄い体験だった・・・
なんだかんだで近くのインド人達はいろいろ気を遣ってくれた。
最後にヒンディー語でありがとうの挨拶しようと思っていたので、
網棚の上でこっそり「地球の歩き方」で「ダンニャワード」という言葉を覚えておいた。

最後に「ダンニャワード」と声をかけると、みんな握手を差し伸べてきた。
これは嬉しいな~、あれ?初めて見る顔のインド人もまぎれている。お前ら適当だな~。



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十分過ぎる思い出を与えてくれた2等普通車。もう2度と乗るものか!!